ホンダが、新型軽自動車「Nシリーズ」の第3弾となる「N-ONE」を11月2日に発売した。往年の大衆車「N360」をモチーフにした愛嬌あるデザインで、11ある車体色と屋根を塗り分けるツートンカラーを用意し、幅広い年齢層にアピールする。開発責任者の浅木泰昭・本田技術研究所主任研究員に、苦労した点などを聞いた。
--開発コンセプトは
「小型車並みの走りと質感を、排気量660ccの軽自動車で目指した。目標にした車は、小型車でシェア首位のホンダ『フィット』だ。制約は厳しかったが、技術屋としては、F1のレギュレーションのようで楽しかった」
--軽自動車ながら、走りにこだわったのは
「小排気量で一番嫌なのは、高速道路で十分に走れないこと。そこでターボ搭載型のツアラータイプを設定し、1300ccのフィット以上の加速性能を達成した。価格差は8万円に抑えている。
いわゆる『ドッカンターボ』を求める人には物足りないかも知れないが、高速でも安心して車の流れをリードできるはずだ」
--デザインも優れている
「ホンダの四輪車の原点で、昭和42年発売の『N360』のデザインモチーフをよみがえらせた。年配の人は『懐かしい』というが、若い人は『目新しい』といってくれる」
「ただ、前後の車軸間隔が長い『N-BOX』と同じ車台を使っており、デザインにこだわりながらも室内の広さを確保できた」
--ツートンカラーも特徴的だ
「『欲しい車を買ったらたまたま軽だった』、そう言える車を目指した。若者は気にしないが、年配になるほど(軽の)黄色いナンバープレートを嫌がる人が多い。そんな『生活臭』を払拭し、楽しさを演出する手段の一つとしてツートンカラーを採用した」
--一番苦労した点は
「安全装備をどこまで充実させるか、顧客に受け入れてもらえるかどうかを悩んだ。最終的には、ハザードランプの点滅で後続車に急ブレーキを知らせるシステムを標準搭載したり、側面からの衝突に備えるサイドカーテンエアバッグを主力クラスに採用した」
「こういった安全装備は軽自動車にこそ必要だが、価格面を重視する顧客のニーズは小さい。しかし世界で車を売っているホンダとして、たとえコスト高でも付けることにした。いずれ広く認められるだろう」